
工事代金の未払いを防ぐ!元請の責任と下請が取るべき対策を解説

建設業界が直面する課題の一つが、建設資材価格の高騰です。主要資材の価格高騰は、資金繰りの悪化につながることもあります。
元請から仕事を請け負う中小企業や現場担当者にとって、工事代金の遅延や未払いも懸念事項ではないでしょうか。
この記事では、工事代金の未払いを防ぐために押さえておきたい、元請の責任と下請が取るべき対策を解説します。

【元請】工事代金の支払い責任とは
元請が果たすべき工事代金の支払い責任について解説します。
- 建設業法と下請法で定められた支払い期日
- 元請の工事代金未払いが発生したときの法的責任と罰則
上記の2点について、詳しく見ていきましょう。
建設業法と下請法で定められた支払い期日
工事代金の支払い期日について、建設業法と下請法でそれぞれ述べられています。建設業法と下請法、それぞれの工事代金の支払い期日を詳しく解説します。
【建設業法】下請代金の支払い期日
建設業法で述べられている下請代金の支払い期日は、以下の通りです。
(下請代金の支払)
第二十四条の三 元請負人は、請負代金の出来形部分に対する支払又は工事完成後における支払を受けたときは、当該支払の対象となつた建設工事を施工した下請負人に対して、当該元請負人が支払を受けた金額の出来形に対する割合及び当該下請負人が施工した出来形部分に相応する下請代金を、当該支払を受けた日から一月以内で、かつ、できる限り短い期間内に支払わなければならない。
引用:建設業法|第三章 建設工事の請負契約 第二節 元請負人の義務(下請代金の支払)
第二十四条の三
上記より、元請が注文者から出来形払・完成払があった場合は、下請に対して1ヶ月以内に支払わなければなりません。
また、下請代金に含まれる労務費は、少なくとも現金で支払うように適切に配慮する必要があります。
【下請法】下請代金の支払い期日
下請法で述べられている下請代金の支払い期日は、以下の通りです。
(下請代金の支払い期日)
第2条の2
下請代金の支払い期日は,親事業者が下請事業者の給付の内容について検査をするかどうかを問わず,親事業者が下請事業者の給付を受領した日(役務提供委託の場合は,下請事業者がその委託を受けた役務の提供をした日。次項において同じ。)から起算して,60日の期間内において,かつ,できる限り短い期間内において,定められなければならない。
2 下請代金の支払い期日が定められなかつたときは親事業者が下請事業者の給付を受領した日が,前項の規定に違反して下請代金の支払い期日が定められたときは親事業者が下請事業者の給付を受領した日から起算して60日を経過した日の前日が下請代金の支払い期日と定められたものとみなす。
上記より、元請は下請から物品を受領した日から60日以内に、代金を支払わなければなりません。
ただし、下請法が適用となるのは以下の4つの取引内容です。
下請法が適用となる取引内容
- 製造委託
- 修理委託
- 情報成果物作成委託
- 役務提供委託
建設業法に規定される建設事業者が行う建設工事は、下請法の対象外となります。
参照:公正取引委員会|知って守って下請法〜豊富な事例で実務に役立つ〜
元請の工事代金未払いが発生したときの法的責任と罰則
元請の工事代金未払いが発生した場合は、法的責任と罰則が科せられることもあります。
建設業法と下請法それぞれの法的責任と罰則について解説します。
【建設業法】工事代金未払いの発生による元請の法的責任と罰則
元請の工事代金未払いが発生した場合、建設業法ではすぐに罰則対象とはなりません。
建設業法「第五章 監督(指示及び営業の停止)第二十八条」の通り、国土交通大臣や都道府県知事が元請に対して、指示をしたり営業の停止を命じたりすることがあります。
ただし、特定建設業者の下請代金の支払いを期日までに実施しなかった場合は、遅延利息を支払わなければなりません。
遅延利息の金額は、日数に応じて、未払金額に国土交通省令で定める率をかけて求められます。
参照:建設業法|第三章 建設工事の請負契約「第二節 元請負人の義務」(特定建設業者の下請代金の支払い期日等)第二十四条の六
【下請法】工事代金未払いの発生による元請の法的責任と罰則
元請の工事代金未払いが発生した場合、下請法では遅延利息を支払う必要があります。
下請法では、遅延利息について以下のように記載があります。
第4条の2
親事業者は,下請代金の支払い期日までに下請代金を支払わなかつたときは,下請事業者に対し,下請事業者の給付を受領した日(役務提供委託の場合は,下請事業者がその委託を受けた役務の提供をした日)から起算して60日を経過した日から支払いをする日までの期間について,その日数に応じ,当該未払金額に公正取引委員会規則で定める率を乗じて得た金額を遅延利息として支払わなければならない。
引用:公正取引委員会|下請代金支払遅延等防止法(遅延利息)第4条の2
元請は、下請から物品を受領した日から60日以内に下請代金を支払っていない場合、日数に応じて遅延利息を支払わなければなりません。


工事代金の未払いが起きたときの対応
工事代金の未払いが起きたとき、どのように対応すべきかを解説します。
契約書など証拠となる書類を用意する
工事代金の未払いが起きたときの決まりは、契約書に記載されていることも多いため、証拠書類を用意しましょう。
建設工事の請負契約の際、必要事項が記載された書面を交わさなければなりません。
上記は建設業法で定められており、書面に署名や記名押印をして相互に交付することが定められています。
建設工事の請負契約に記載する内容には、請負代金の支払時期や遅延利息・違約金などがあるため、未払いが生じた際にどのように対応すべきかがわかります。
ただし、契約書がない場合でも工事代金の請求は可能です。
見積書・注文書・注文請書・メールの内容などを証拠資料として、工事代金を請求することもできます。
元請に対して支払いを催促する
建設工事の請負契約書など、工事代金の支払い期日について記載された証拠資料を用意したら、元請に対して支払いを催促しましょう。
元請に工事代金の支払いを催促する場合の方法は、以下の通りです。
【工事代金の支払いを催促する方法】
- 電話
- 訪問
- 内容証明郵便
- 支払督促
内容証明郵便は一般書留郵便物の内容文書を証明するもので、支払督促は金銭の支払いを求める際に行う裁判手続の一種です。
訴訟のように裁判所に来る必要はなく、書類審査のみで手続きができます。
支払いに応じてもらえない場合は訴訟の手続きを行う
元請へ工事代金の支払いを催促したにもかかわらず、支払いに応じてもらえない場合は、訴訟の手続きに進むこともあります。
裁判所への手続きには、訴状や申立書などの書面が必要です。
また、民事訴訟には以下の種類があります。
【民事訴訟の種類】
- 通常訴訟:財産権に関する紛争の解決を求める基本的な訴訟
- 少額訴訟:60万円以下の金銭を請求をする場合に限り利用できる訴訟
ただし、工事代金の未払いによる訴訟は民法により時効が定められているため、できるだけ早く訴訟の手続きを進めましょう。
また、建設工事紛争審査会を利用するのも一つの方法です。
建設工事紛争審査会とは、建設工事の請負契約に関する紛争を解決するための公的機関で、裁判所よりも迅速で費用面の負担が少ないのが特徴です。
審査会では、法律・建築・土木などの専門家により、あっせん・調停・仲裁を行います。
参照:民法|第七章 時効 第三節 消滅時効(債権等の消滅時効)第百六十六条
工事代金の未払いを防ぐためのポイント
工事代金の未払いを防ぐためのポイントは、以下の3つです。
必要事項が記載された建設工事請負契約書を交わす
工事代金の未払いを防ぐためには、必要事項が記載された建設工事請負契約書を交わすことが重要です。
建設工事の請負契約の際、必要事項を書面に記載し署名や記名押印の後、相互に交付しなければならないことが定められています。
建設工事の請負契約には「請負代金の額」「支払の時期と方法」「遅延利息・違約金・損害金」「紛争の解決方法」などを記載しなければなりません。
工事代金に関するトラブルを防ぐために、正しい建設工事請負契約書を交わしましょう。
参照:建設業法|第三章 建設工事の請負契約 第一節 通則(建設工事の請負契約の内容)第十九条
以下の記事では、建設業界の人材不足とその解決策を詳しく紹介しています。ぜひ、本記事と併せてご覧ください。
関連記事
建設工事請負契約が施工前に必要な理由とは?記載内容や気をつけるポイントも解説
工程と支払い期日の進捗を可視化・共有する
工程と支払い期日の進捗を可視化したり共有したりすることも、工事代金の未払いを防ぐ上で大切です。
元請会社は注文者から出来形払・完成払があった場合に、下請会社に対して1ヶ月以内に支払わなければならないと、建設業法で定められています。
ただし、元請が支払ってもらった金額の出来形に対する割合、下請が施工した出来形に相当する代金が支払われるため、工程を正確に把握し関係者間で共有することが重要です。
契約前に元請の支払能力・実績・評判を調査する
建設工事の請負契約を交わす前に、元請の支払能力・実績・評判を調査しておくことも、工事代金の未払いを防ぐ上で欠かせません。
元請の支払能力・実績・評判などから、工事代金の未払いなどのトラブルの有無を把握できることもあります。
金融庁が運営している「EDINET」や企業のIR情報などをチェックするのも良いでしょう。
また、元請と継続的に長期的な関係を築くためには、信頼できる元請と出会うことが重要です。
信頼できる元請や協力会社をお探しの方は、施工業者様同士のマッチングサービス「スケッタブル」の利用も検討してみてください。
まとめ
今回は、工事代金の未払いを防ぐためのポイント、工事代金の未払いが起きたときの対応について解説しました。
工事代金の支払いに関するトラブルが起こらないように、本記事で紹介した内容を参考に、自社で対策をしてみてください。
信頼できる元請や協力会社とつながるためには、施工会社間のマッチングサービス「スケッタブル」を利用するのも効果的です。
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