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建設工事請負契約が施工前に必要な理由とは?記載内容や気をつけるポイントも解説

建設工事を請け負う際に必要となるのが「建設工事請負契約書」です。口頭や簡単な文書での契約とは異なり、建設工事請負契約書には記載すべき項目が定められています。

正しく建設工事請負契約を結ばないと、建設業法の違反となる可能性もあります。

この記事では、建設工事請負契約が施工前に必要な理由を詳しく解説します。契約書の記載内容や気をつけるポイントも紹介するので、建設工事請負契約を結ぶ際に参考にしてみてください。

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請負契約と常用契約の違い

まずは、請負契約と常用契約の違いについて押さえておきましょう。

請負契約

「請負契約」は、建設工事の完成に対して報酬が支払われる契約です。

建設業法では、請負契約を以下のように定義しています。

(請負契約とみなす場合)

第二十四条 委託その他いかなる名義をもつてするかを問わず、報酬を得て建設工事の完成を目的として締結する契約は、建設工事の請負契約とみなして、この法律の規定を適用する。

引用:建設業法|第三章 建設工事の請負契約「第一節 通則」 第二十四条

請負契約を結んだ場合は、発注者が受注者に依頼した仕事のすべてを完成させたときに、受注者へ報酬が支払われます。人件費だけでなく、材料費・交通費などの経費も報酬に含まれるのが特徴です。

常用契約

「常用契約」は、決められた時間の業務に対して報酬が支払われる契約です。

1人の作業員が1日に働く労働時間の単位を「人工」と呼びます。「1人工=1人×1日」とされ、人工をもとに報酬が支払われます。ただし、常用契約は人件費のみが支払われるので、材料費・交通費などの経費は発注者が負担するのが一般的です。

また、混同しやすい契約に「委任契約」「派遣契約」がありますが、以下のような違いがあります。

契約の種類

契約の概要

委任契約

法律行為を委託すること
(準委任契約:法律行為でない事務を委託する契約)

派遣契約

労働者の派遣を約束すること

【注意】一人親方などの個人事業主は常用契約を結べない

一人親方は個人事業主の立場であり、労働基準法の対象外となります。労働者ではない一人親方などの個人事業主は、その働き方が元請の指揮命令下にあるなど、実態として「雇用契約」や「労働者派遣」と判断される場合は「偽装請負」にあたるため注意が必要です。

形式的には請負契約でも、受注者が元請の指揮命令下で業務を行い常駐して働く場合は、実質的に労働者派遣とみなされる可能性もあります。「偽装請負」と判断されることもあるため、注意が必要です。

労働者派遣法では、建設業務の労働者派遣を禁止しているため、偽装請負を行うと労働者派遣法に違反する恐れもあります。

労働者派遣が禁止されている建設業務は、以下の通りです。

第二章 労働者派遣事業の適正な運営の確保に関する措置

第一節 業務の範囲

第四条

二 建設業務(土木、建築その他工作物の建設、改造、保存、修理、変更、破壊若しくは解体の作業又はこれらの作業の準備の作業に係る業務をいう。)

引用:労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律 第二章 労働者派遣事業の適正な運営の確保に関する措置「第一節 業務の範囲」第四条 二

元請で施工する際に必要な「建設工事請負契約」とは

契約書と電卓、財布、ボールペンの画像

元請で施工する際には「建設工事請負契約」が必要です。

建設業法では、以下のように建設工事の請負契約の原則が掲載されています。

第三章 建設工事の請負契約

第一節 通則

(建設工事の請負契約の原則)

第十八条 建設工事の請負契約の当事者は、各々の対等な立場における合意に基いて公正な契約を締結し、信義に従つて誠実にこれを履行しなければならない。

引用:建設業法 第十八条(建設工事の請負契約の原則)

建設工事請負契約は、注文者と受注者が対等な立場で公正な契約を締結することを目的としています。

施工時に建設工事請負契約が必要な理由

施工時に建設工事請負契約が必要な理由は、以下の通りです。

注文者と受注者のトラブルを防ぐ

建設工事請負契約を結ぶことで、注文者と受注者のトラブルの防止につながります。口頭や簡単な文書などを交わすだけでは、確認事項や取り決めに漏れがあることもあるでしょう。

口頭の場合は「言った・言わない」などのトラブルに発展しがちです。一方で簡単な文書では、詳細な取り決めがないため、問題発生時の対処が遅れることもあります。

注文者と受注者のトラブルを防ぐためにも、建設工事請負契約を締結しましょう。

トラブルが発生した場合のルールを決める

建設工事請負契約では、トラブルが発生した場合にどのように対応するかのルールを決められます。

トラブル発生時、素早く対応しなければ工事が遅れる原因となります。建設工事がストップすれば、工程全体に悪影響を及ぼすでしょう。

万が一のトラブルに備え、対応策を定めた建設工事請負契約を結ぶことが大切です。

訴訟に発展した際の証明ができる

建設工事請負契約を結べば、トラブルが訴訟に発展した場合の証明材料となります。訴訟の際に証明材料がなければ、注文者と受注者の紛争が長期化する可能性もあります。

建設工事請負契約は、注文者と受注者が対等な立場で同意し契約を締結しているのが特徴です。損害賠償の請求において不当な扱いを受けにくくなるのも、建設工事請負契約を結ぶメリットです。

【施工前】建設工事請負契約に記載する内容

建設業法で定められている建設工事の請負契約の内容は、以下の通りです。

(建設工事の請負契約の内容)

第十九条 建設工事の請負契約の当事者は、前条の趣旨に従つて、契約の締結に際して次に掲げる事項を書面に記載し、署名又は記名押印をして相互に交付しなければならない。

一 工事内容

二 請負代金の額

三 工事着手の時期及び工事完成の時期

四 工事を施工しない日又は時間帯の定めをするときは、その内容

五 請負代金の全部又は一部の前金払又は出来形部分に対する支払の定めをするときは、その支払の時期及び方法

六 当事者の一方から設計変更又は工事着手の延期若しくは工事の全部若しくは一部の中止の申出があつた場合における工期の変更、請負代金の額の変更又は損害の負担及びそれらの額の算定方法に関する定め

七 天災その他不可抗力による工期の変更又は損害の負担及びその額の算定方法に関する定め

八 価格等(物価統制令(昭和二十一年勅令第百十八号)第二条に規定する価格等をいう。)の変動又は変更に基づく工事内容の変更又は請負代金の額の変更及びその額の算定方法に関する定め

九 工事の施工により第三者が損害を受けた場合における賠償金の負担に関する定め

十 注文者が工事に使用する資材を提供し、又は建設機械その他の機械を貸与するときは、その内容及び方法に関する定め

十一 注文者が工事の全部又は一部の完成を確認するための検査の時期及び方法並びに引渡しの時期

十二 工事完成後における請負代金の支払の時期及び方法

十三 工事の目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合におけるその不適合を担保すべき責任又は当該責任の履行に関して講ずべき保証保険契約の締結その他の措置に関する定めをするときは、その内容

十四 各当事者の履行の遅滞その他債務の不履行の場合における遅延利息、違約金その他の損害金

十五 契約に関する紛争の解決方法

十六 その他国土交通省令で定める事項

引用:建設業法|第三章 建設工事の請負契約「第一節 通則(建設工事の請負契約の内容)」第十九条

建設工事請負契約を締結する際は、法律に基づき以下の手続きが必要です。

順序1

建設業法で定められている建設工事の請負契約の内容を記載する

順序2

署名また記名押印をする

順序3

注文者と受注者相互に交付する

建設工事請負契約を交わさない、または法律で定められた事項の記載に漏れがある場合は、国土交通大臣や都道府県知事から指示を受ける可能性があります。

参照:建設業法 第二十八条

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建設工事請負契約書の雛形を使用する際に気をつけるポイント

インターネット上には、無料でダウンロードできる建設工事請負契約書の雛形があります。

ただし、建設工事請負契約書の雛形を使用する際は、以下のポイントに注意しましょう。

建設業法で定める必須項目が抜けていることがある

建設業法では「建設工事の請負契約の内容」として、記載しなければならない項目を定めています。しかし、建設工事請負契約書の雛形には、建設業法で定める必須項目が抜けていることもあります。

契約の締結時に取り決めをすべき項目が抜けていると、注文者と受注者のトラブルに発展する可能性もあるでしょう。また、建設業法の違反とみなされ、国土交通大臣や都道府県知事から指示を受けることもあります。行政指導は改善命令に近いものですが、悪質な場合は許可取消なども考えられます。

雛形を使用する際は、建設業法の「建設工事の請負契約の内容」に記載されている内容と照らし合わせ、抜けている項目がないかを確認してから使用しましょう。

実際の建設工事の内容や条件と合っていないことがある

建設工事請負契約書の雛形は、実際の建設工事の内容や条件と合っていないこともあるため、使用の際は注意が必要です。また、特殊な内容や条件で契約を結ぶ場合、雛形には記載されていない項目があることもあります。

発注者が定める内容や条件に合わせて、建設工事請負契約書を反映しなければなりません。実際の建設工事の内容や条件と合っていない雛形はそのまま使用せず、内容を個別の契約に合わせて修正・追記しましょう。

元請と下請の責任範囲が不明確になることがある

建設工事請負契約書の雛形を使用する場合、元請と下請の責任範囲が不明確になることがあります。

元請とは、発注者から建設工事を請け負った建設業者のことを指します。一方で下請業者とは、元請から建設工事の一部を請け負った建設業者です。発注者と元請だけでなく、元請と下請が建設工事請負契約を結ぶときも契約書が必要です。

ただし、元請と下請の契約締結時は、使用する契約書に注意しましょう。発注者と元請が交わしたものと同じ契約書を使うと、元請と下請の詳細な責任の範囲が記載されていないことがあります。

自社が下請と契約を結ぶ場合は、工事内容や条件に合わせて記載事項を追加する必要があります。

参照:国土交通省|適正な下請契約に向けて 最終改訂:令和5年11月

まとめ

この記事では、建設工事請負契約が施工前に必要な理由を解説しました。建設工事請負契約書に記載する内容や気をつけるポイントも紹介したので、契約に関する理解が深まったのではないでしょうか。

建設工事請負契約書は単なる形式的な書類ではなく、注文者と受注者が信頼関係を築き、トラブルを未然に防ぐための重要な取り決めです。

また、トラブルが発生した場合でも、どのように対処すべきかが記載されているので、スムーズに解決につながります。さらに、訴訟に発展した場合の証明材料となるのが建設工事請負契約書です。

建設工事を円滑に進めて自社を守るためにも、建設工事請負契約に関する正しい知識を身につけ、適切に契約を締結することが不可欠です。建設工事請負契約を結ぶ際は、この記事を参考にしてみてください。

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