コラム
建築資材

木材の物価は今後どうなる?ウッドショックの影響や物価高騰のポイントを解説

一時期、急騰し「ウッドショック」として大きな影響を与えた木材価格も、最近は落ち着きを見せています。しかし、「価格は今後どうなるのか?」「再び高騰するリスクはないのか?」といった不安や疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。

この記事では、ウッドショックを振り返りながら、木材価格に影響を与える様々な要因を解説するとともに、将来的な価格変動リスクへの備えや対策についてご紹介します。現状を理解し、今後の事業計画を考える上での参考にしてください。

木材価格は落ち着く傾向にある

一時期、世界的に急騰し「ウッドショック」と呼ばれた木材価格ですが、2021年から2022年にかけてのピーク時と比較すると、現在は供給網の混乱がある程度解消されたことなどから落ち着きを取り戻し、価格は下落傾向にあります。北米や欧州を中心とした世界的な住宅需要が、金利上昇などの影響で沈静化したことも大きな要因と考えられます。

ただし、輸送コストの高止まりや、地政学的なリスクなど不安定な要素も依然として残っており、コロナ禍以前の水準まで完全に戻ったわけではありません。今後の価格動向については、引き続き注意深く見守る必要があるでしょう。

ウッドショックとは?

伐採された木が山積みになっているイメージ画像

ウッドショックとは、主に2021年頃から世界規模で発生した木材価格の急激な高騰現象を指します。特に、住宅の構造材などに使われる北米産のSPF材(※)などを中心に価格が数倍にも跳ね上がり、木材の調達難から工期の遅延や住宅価格の上昇を引き起こすなど、日本の住宅・建設業界にも甚大な影響を及ぼしました。

この背景には、コロナ禍を契機とした世界的な金融緩和による住宅需要の急増や、コンテナ不足などの物流混乱、製材所の稼働率低下といった供給面の制約が複合的に重なったことが挙げられます。(※スプルース・パイン・ファーの略称)

ウッドショックから見た木材価格に影響を与える要素

ウッドショックは、木材の価格が単一の理由ではなく、地球規模の様々な要因が複雑に絡み合って変動することを、私たちに改めて認識させました。単純な需要と供給のバランスだけでなく、主要生産国の経済状況や政策、国際的な物流網の状態、為替レートの変動、さらには地政学的リスクや気候変動、環境規制といった非常に多岐にわたる要素が影響し合っています。

ここでは、ウッドショックの経験を踏まえ、木材価格に特に影響を与えやすいと考えられる主な要素について解説していきます。

国内外の新築住宅の需要急増

木材価格の変動に最も大きな影響を与える要因の一つが、住宅建設の需要動向です。ウッドショックの際は、コロナ禍における世界的な金融緩和や、リモートワーク普及に伴う住環境改善ニーズの高まりなどから、特に北米で新築住宅やリフォームの需要が爆発的に増加しました。日本国内でも、一時期は住宅取得支援策などにより堅調な需要がありました。

こうした国内外での住宅需要の急激な盛り上がりが、木材需要を押し上げ、供給を逼迫させる大きな要因となったのです。

感染症などによる生産効率の低下

木材の安定供給は、生産地での伐採、製材、加工といった一連のプロセスが円滑に行われることが前提です。

しかし、新型コロナウイルスのパンデミック時には、主要な木材生産国において、感染拡大防止のためのロックダウン(都市封鎖)や、工場・製材所での人員削減、稼働時間短縮などが相次ぎました。これにより、原木の伐採から製品としての木材が出荷されるまでのサプライチェーン全体で生産能力が大幅に低下し、世界的な需要増に対応できない状況を生み出してしまいました。

コンテナ不足による輸入量の減少

日本のように木材の多くを輸入に頼っている国にとっては、国際物流の状況も価格を左右する重要な要素です。ウッドショック時には、世界的な物流の混乱から海上輸送用のコンテナが極端に不足し、木材を運ぶための船腹を確保することが困難になりました。

また、主要港での荷役作業の遅延や、コンテナ船の運賃そのものの高騰も深刻な問題となりました。これにより、輸入木材の調達が滞り、国内での品不足感と価格上昇に拍車がかかる結果を招いたのです。

森林が豊富な地域における紛争・災害

木材は天然資源であるため、産地の政治情勢や自然災害の影響も受けやすいという側面があります。

例えば、ロシアによるウクライナ侵攻は、世界有数の木材輸出国であるロシアからの木材(シベリア産カラマツなど)の供給に大きな影響を与えました。また、カナダやアメリカ、オーストラリアなどで近年頻発している大規模な森林火災は、貴重な森林資源を焼失させ、長期的な供給能力の低下につながる懸念があります。

こうした予期せぬ紛争や災害も、需給バランスを崩すリスク要因です。

天然資源の保護・伐採寄生など

地球環境問題への関心の高まりも、木材の供給量や価格に影響を及ぼします。持続可能な森林管理や生物多様性の保全といった観点から、世界的に違法伐採の取り締まりや、原生林保護のための伐採規制が強化される傾向にあります。

これにより、市場に供給される木材の量が制限されたり、認証材などの価格が上昇したりする可能性があります。また、マツクイムシのような病害虫の被害が拡大し、特定の樹種の伐採可能量が減少するといった自然要因も、供給制約につながることがあります。

ウッドショックは再燃する可能性がある?

一時期の異常な価格高騰は沈静化しましたが、ウッドショックを引き起こした根本的な要因のいくつかは依然として残っており、今後再び木材価格が急騰する可能性はゼロではありません。

例えば、世界経済の回復や新たな住宅取得支援策などによって再び住宅需要が急増したり、地政学的な緊張の高まりや大規模な自然災害によって供給網が寸断されたりするリスクは常に存在します。

また、脱炭素化の流れの中で木質バイオマス発電の需要が増加するなど、新たな需要要因も考えられます。価格の安定を楽観視せず、常に変動リスクを意識しておく必要があるでしょう。

木材価格の物価が高騰した場合にできる対策

ウッドショックのような木材価格の急騰は、建設会社の利益を圧迫し、経営に深刻なダメージを与えかねません。将来、同様の事態が起こる可能性も視野に入れ、平時からリスク管理策を講じておくことが極めて重要です。

価格変動の影響を最小限に抑え、安定した事業運営を続けるためには、以下のような対策を検討しておくことが有効と考えられます。

状況に応じて仕入先を変える

特定の国や地域、あるいは少数の取引先に木材調達を依存していると、その供給ルートに問題が生じた場合に代替手段がなく、大きな打撃を受ける可能性があります。リスク分散の観点から、仕入先を多様化しておくことが重要です。

例えば、輸入材だけでなく国産材の活用比率を高めることを検討したり、複数の木材サプライヤーと日頃から良好な関係を築いておいたりすることで、いざという時に調達先の選択肢を確保し、供給途絶のリスクを低減できます。

不測の事態に備えて工期や工事内容に関する合意をする

木材の供給不足や予期せぬ価格高騰により、当初の契約通りに工事を進めることが困難になるリスクがあります。こうした不測の事態に備え、工事請負契約を締結する際に、発注者との間で事前にルールを決めておくことが有効な対策となります。

具体的には、資材の納期遅延や価格変動が一定レベルを超えた場合の工期の見直し条件や、仕様変更(代替材料の使用など)の可否、契約金額の変更に関する取り決め(物価スライド条項など)を、契約書に明確に記載しておくことが後の紛争予防につながります。

状況にあわせた工事価格を設定する

木材価格が不安定な状況下では、過去のデータや経験則だけに基づいた見積もり・価格設定は非常に危険です。見積もりを提出する際には、可能な限り最新の市場価格を調査・反映させるとともに、その見積もりの有効期間を通常より短く設定するなどの工夫が考えられます。

また、長期にわたる工事契約の場合には、主要資材の価格変動リスクを発注者・受注者間で公平に分担できるよう、前述の物価スライド条項の適用を交渉することも重要です。適正な利益を確保できる価格設定を心がける必要があります。

まとめ

本記事では、木材価格の最新動向から、価格変動の背景にある様々な要因、そして将来の価格高騰リスクに備えるための対策について解説しました。ウッドショックと呼ばれるほどの急騰はひとまず落ち着きを見せたものの、木材価格は世界経済や住宅需要、供給国の状況、物流、環境問題など、多くの複雑な要因によって常に変動する可能性をはらんでいます。

建設業に携わる者としては、このような価格変動リスクを常に念頭に置き、仕入先の多様化や契約条件の整備、適時適切な価格設定といった対策を講じ、変化に対応できる柔軟な経営体制を構築しておくことが不可欠と言えるでしょう。

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