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一人親方の労災に元請責任はあるのか?法的リスクと対策を徹底解説

「一人親方なら大丈夫」は通用しない時代

建設現場で頻繁に見られる一人親方ですが、労災事故が発生した際に「うちは請負契約だから関係ない」という認識は、法的には通用しない場合があります。一人親方が労働者災害補償保険(以下、労災保険)に未加入だった場合、事故によって元請企業が損害賠償責任を問われるケースもあります。

たとえば、一人親方が高所作業中に転落して重大な障害を負った事故において、現場の安全対策が不十分だったことを理由に、元請企業に損害賠償命令が出た例も過去にあります。一人親方であっても、元請企業の現場管理責任が問われる可能性があるのです。

この記事では、元請企業の法的責任と具体的なリスク回避策を解説し、自社を守るための行動を明らかにします。

出典:厚生労働省|一人親方等の安全衛生対策について

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原則として一人親方は労災保険の対象外。しかし元請責任はゼロではない

建設現場などで広く活躍している一人親方は、企業に雇用されている「労働者」ではなく、あくまで「個人事業主」という立場です。そのため、元請企業が加入している労災保険の補償対象には含まれません。業務中に事故が発生しても、原則としてその補償は適用されず、保険給付を受けられないのが基本です。

この点から、「一人親方は労災保険の対象外だから、自社には責任が及ばない」と考える元請企業も少なくありません。しかし、その認識は非常に危険です。現実には、事故の原因や現場の管理状況などによって、元請企業に法的責任が発生するケースが存在します。

つまり、労災保険の対象外であることと、企業としての責任がゼロであることはまったく別の話です。形式上は請負契約であっても、現場の実態や安全配慮の有無によって、元請企業が訴訟リスクを抱える可能性もあるのです。

「労災保険の対象外」であっても法的責任が問われるケースがある

元請企業の責任は、契約書の文面や保険の適用範囲だけではなく、以下の実態にもとづいて判断されます。

  • 実際の現場でどのような働き方をしていたか
  • 安全対策が適切だったか

たとえ一人親方であっても、働き方や現場管理に問題があれば、損害賠償や訴訟リスクを抱えることになります。形式的な契約だけで安心せず、実態に目を向け、現場管理をしましょう。

続いて、元請企業が特に注意すべき「2つの代表的なリスク」について、具体例とともに詳しく解説します。

出典:厚生労働省|2023年4月より労働者と同じ場所で危険有害な作業を行う個人事業者等の保護措置が義務付けられます!(リーフレット)

元請責任が問われる2大リスク:安全配慮義務違反と偽装一人親方

元請企業が負う法的責任は、一人親方が労災保険の対象外でもゼロではありません。特にリスクが高いのは、安全配慮義務違反偽装一人親方の2つです。以下で具体的に説明します。

安全配慮義務違反が認定される具体的なケースとは

元請企業は現場で働くすべての作業者に対して、安全かつ健康的な作業環境を提供する「安全配慮義務」を負っています。この義務は請負契約の一人親方にも及ぶのです。

  • 仮設足場が不安定
  • 落下防止のための適切な措置が取られていない
  • 作業手順や危険回避の説明が十分にされていない

こうした状況が発生した場合は、元請企業の安全配慮義務違反として、損害賠償責任が問われる可能性が非常に高くなります。したがって、元請企業は安全管理体制を徹底し、事故を未然に防止する責任があることを強く認識しなければなりません。

出典:厚生労働省|一人親方等の安全衛生対策について

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「偽装一人親方」と見なされる契約や働き方に注意

形式上は請負契約を結んでいても、実態として元請企業の指揮命令のもとで作業を行っている場合、「偽装一人親方」と認定されるリスクがあります。

  • 作業時間や作業方法、作業量などが細かく指定されている
  • 報酬が日給や月給、時給など、固定制で支払われている(出来高制ではない)
  • 始業時間・終業時間・休憩時間は、元請企業が決めている
  • 元請企業からの依頼を断ったり、他社の仕事を受注したりする自由がない
  • 労働者(従業員)と同様の服務規程の遵守が求められている

このような実態があると、労働基準法や民法に基づき元請企業に使用者責任が生じ、労災事故が発生した際に重い法的責任を負う可能性が高まります。したがって、元請企業は契約内容だけでなく、実際の働き方を正確に把握し、適正な管理を行うことが不可欠です。

出典:厚生労働省|「労働者派遣・請負を適正に行うためのガイド」について

作業着を着た男性が「リスク管理」と書かれたプラカードを手にしている画像

元請企業がとるべき具体的なリスク回避策とは

特別加入証明書の提出を必須にする仕組みづくり

一人親方が労災保険に未加入の場合、事故が発生した際に保険による補償が受けられず、元請企業に賠償責任が及ぶリスクが高まります。そのため、一人親方には必ず以下を義務化しましょう。

  • 労災保険の特別加入
  • 労災保険特別加入証明書の提出

特別加入制度とは、事業主である一人親方が労災保険に任意で加入できる制度です。制度に加入することで、事故時には通常の労働者と同様に労災給付を受けることが可能になります。証明書は原本をコピーして保管し、毎年の更新時期には再提出を求めるといった運用が有効です。

出典:厚生労働省|特別加入制度のしおり(一人親方その他の自営業者用)

業務委託契約書で一人親方との関係性を明確にする

元請企業として、業務委託契約書の内容をしっかり整備することも重要です。作業内容や報酬体系、作業時間、業務指示の有無などについて詳細に明記し、「労働者性」が疑われないようにしましょう。

契約書には、労働者として誤認されないよう「業務の遂行は受託者の裁量による」旨や、「元請企業は日々の業務に対する指揮命令を行わない」などの条項を入れると効果があります。テンプレートを活用しつつ、定期的に専門家のチェックを受けると安心です。

出典:厚生労働省|労働者として労災保険の適用を行う必要があります(PDF)

信頼できる一人親方と取引することが重要なリスク対策

現場におけるトラブルを未然に防ぐには、最初から労災保険に特別加入し、コンプライアンス意識の高い一人親方と取引することが重要です。『スケッタブル』は、労災保険の特別加入を済ませた一人親方のみが登録できるプラットフォームで、元請企業にとって非常に心強い仕組みとなっています。

また、契約書の電子管理や過去の取引実績の確認、一人親方の評価機能など、発注先選びに役立つ機能を多数搭載。これにより、法的リスクを抑えつつ、信頼できる一人親方と円滑な取引を実現することができます。

出典:スケッタブル公式サイト

まとめ:一人親方の労災リスクは「契約」と「管理」で防げる

元請企業が一人親方と適切な契約を結び、現場の安全管理を徹底することで、法的リスクは大きく軽減できます。

最後に、リスク管理のためのチェックポイントを以下に整理します:

  • 一人親方が労災保険の特別加入制度に加入しているか?
  • 加入証明書を取得・保管しているか?
  • 業務委託契約書に「労働者性を否定する記載」があるか? また、その内容と実態が伴っているか?
  • 安全配慮義務を果たす体制を整えているか?

これらをひとつずつ確認し実行することで、万が一の事故にも備え、より安全な現場づくりを実現できます。適切な管理と契約があれば、現場はきっと安全な場所となるはずです。安心して取り組んでいきましょう。

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