
建設業元請になるには?許可区分・経営事項審査対策・改正法対応の実践ガイド

建設業において元請会社(以下、元請)は、工事契約を締結し施工管理の責任を担います。受注できる案件の規模や利益率が大きく変わるため、元請になることは中小施工会社にとって非常に重要なステップです。
この記事では、元請になるために必要な建設業許可や経営事項審査の対策、技術者配置基準、さらに改正建設業法の最新動向まで詳しく解説します。また、直請受注を増やすための営業戦略にも触れ、元請化に向けた実践的なステップをお伝えします。

元請と下請の違いを徹底解説!元請になるための第一歩
元請と下請の法的責任や契約の違いについて整理し、どのような要件を満たせば元請として活動できるのかを解説します。
元請と下請の法的責任の違いとは?
元請は発注者と直接契約を結び、工事全体の完成責任や品質・安全の管理、工期の遵守、下請業者の選定・監督など幅広い役割を担います。これに対し下請は元請から指示を受け、契約範囲内の作業を遂行しつつ、安全管理や品質維持などの基本的な義務を果たします。
元請工事における法的責任や労災保険について
元請は労災保険や安全管理について法的責任を負います。現場で事故や災害が発生した場合、その責任を問われるケースも少なくありません。施工全体を統括する立場として、自社はもちろん下請業者についても労災保険の加入状況に注意を払う必要があります。
さらに、建設業法にもとづき、現場の労働環境を適切に管理し、労働条件が適正であることを確認しなければなりません。元請がこれらの法的義務を的確に果たすことで、現場で働くすべての作業員の安全と健康が守られます。
元請になるために必要な建設業許可と経営事項審査対策
元請として受注するためには建設業許可が必須です。また、経営事項審査を通じて会社の信頼性を高めることが重要になります。
建設業許可の取得方法と元請化に必要な要件
元請化を実現するために必要な建設業許可は「一般建設業」と「特定建設業」の2種類に分かれており、下請契約の金額により区分されます。
また、許可を取得するためには、一定の技術者の配置や経営基盤などが求められます。
経営事項審査でA評価を取るために押さえるべきポイント
経営事項審査は、元請として公共の直請案件を獲得し、利益率とブランド力を高めるために避けて通れない評価制度です。特にA評価は信頼度アップに直結します。
A評価を獲得するための具体策
- 建設業許可を取得する
- 決算報告(決算変更届)を期限内に提出する
- 経営状況分析を取得する
- 経営事項審査の各項目を強化する
・安定した売上高
・高い自己資本比率や利益率
・充実した過去の施工実績
・社会保険や退職金共済への加入
地域密着の中小施工会社だからこそ、財務をしっかり整え、施工実績を積み上げることが強みになります。計画的な経営改善で信頼される元請を目指しましょう。
元請としての技術者配置基準とそのクリア方法
元請化を進める上で確実にクリアすべき条件が「技術者配置基準」です。建設業法では元請に対し、工事の規模に応じて「主任技術者」または「監理技術者」を適切に配置することが義務付けられています。
技術者の種類と役割
主任技術者
- すべての元請工事現場に必須。施工の技術管理を担当し、施工計画や安全管理も行います。
- 建設業許可を持つ業者は請負金額に関係なく配置が必要です。
監理技術者
- 元請が下請工事の総額5,000万円以上(建築一式工事は8,000万円以上)を発注する場合に配置義務があります。
クリア方法のポイント
- 必要資格を持つ技術者を雇用または育成する
- 工事規模と下請構成を把握し、どの技術者が必要かを明確にする
- 監理技術者が必要な規模の案件を受注する場合は、早めに適任者の確保や外部の専門家活用も検討する
- 施工体制台帳の作成や現場管理体制を整備し、実務での技術者の役割が果たせるように体制を構築する
中小施工会社の成長には技術者の配置と管理体制の整備が欠かせません。今から準備を始めることで、公共・民間直請案件への元請化がスムーズになります。


改正建設業法2024-25年施行!元請化に向けた努力義務のポイント
2024年から施行される改正建設業法では、元請としての役割がさらに重くなっています。公共・民間の直請案件を獲得し、利益率とブランド力を高めるためにも、以下の努力義務にしっかり対応する必要があります。
標準労務費の提示・配慮
下請業者に支払うべき適正な労務費(標準労務費)を明示し、不当な低賃金契約を防ぐ努力が求められています。労務費の見積もり根拠を尊重し、明確な契約書作成も必要です。
工期の適正化
工期を長引かせず、無理のないスケジュール管理に努めることが義務付けられています。長期化は下請の負担増大や品質低下にもつながるため、元請が主体的に調整します。
これらの対応は単なる法令遵守にとどまらず、元請としての信頼性向上につながります。発注者や下請からの信頼を得ることで、安定した受注体制構築や利益確保を目指しましょう。
出典:国土交通省|建設業法・入契法改正(令和6年法律第49号)について
直請受注を増やすための営業戦略と実践法
元請化を目指す地域密着の中小施工会社にとって、直請受注を安定的に増やすことは利益率・ブランド力向上の鍵です。ここでは実践的な営業戦略として、実績ポートフォリオの整備、信用保証・電子入札への対応、スケッタブルの活用について具体的に解説します。
1.実績ポートフォリオの整備と活用
直請案件を獲得する上で最も有力な営業ツールのひとつが実績ポートフォリオです。過去に携わった工事やプロジェクトの詳細をしっかり整理・可視化し、実際の成果物や施工管理の体制なども資料化することで、発注者に対し自社の実力・信頼性を効果的にアピールできます。
- 工事内容の詳細
- 施工管理・安全体制
- 証明書類や表彰
こうしたポートフォリオは、「前例がある会社」「任せても安心」と発注者に感じさせるツールとなります。積極的に活用し、他社と差別化を図りましょう。
2.信用保証と電子入札対応
直請案件、特に公共工事の場合には、信用保証の取得が参加の前提条件となることも多く、これをクリアすることで規模の大きな元請案件への挑戦の機会が広がります。信用保証は金融機関や保証会社を通じて取得でき、安定した経営姿勢と着実な実績づくりが審査通過のポイントです。
また、電子入札対応も不可欠です。公共工事の多くは電子入札システムでの手続きとなるため、早期にシステム導入・運用ルールの理解を進めておくことで、元請としてスムーズに案件参画が可能となります。地域の公共発注機関が主催する電子入札セミナーや説明会なども積極的に活用しましょう。
出典:福井県信用保証協会|信用保証のしくみ、国土交通省電子入札システム|電子入札とは
3.スケッタブルの活用による受注拡大
元請化を目指す中小施工会社にとって、スケッタブルは単なるマッチングサービスを超えた強力な受注拡大のプラットフォームです。業界特化の会員制サービスとして案件獲得と人材確保を同時に支援し、元請案件へのスムーズな挑戦を可能にします。
スケッタブルの活用ポイント
- 信頼性の高いネットワーク
- 人材と協力会社の迅速なマッチング
- 成果を高めるサポート
スケッタブルを活用すれば、元請案件の獲得が加速します。地域密着の中小施工会社が一歩先の成長を目指すための必須ツールです。
出典:スケッタブル公式
元請化のために必要な戦略と実行すべきステップ
- 許可取得:まずは建設業許可を取得し、適切な許可区分に対応する。
- 経営事項審査:経営事項審査で高評価を得るための対策を講じる。
- 営業活動:実績ポートフォリオを強化し、信用保証や電子入札に対応。
- 法改正対応:改正建設業法にもとづいた元請責務を果たす。
元請化は決して簡単な道ではありませんが、確かな準備と戦略的な取り組みがあれば、必ず実現できます。建設業許可の取得から経営事項審査のクリア、最新法令への対応、そして効果的な営業戦略の実践まで、一歩ずつ着実に進めることが成功への鍵です。
地域に根ざした中小施工会社こそが、元請として新たな価値を創造し、利益率とブランド力を高めるチャンスをつかめます。一緒に元請化への第一歩を踏み出しましょう。
