
生コンクリートの価格が高騰?価格推移と価格に影響を与える要因を解説

生コンクリートは、建築物や土木構造物を構築する際に使用される資材の1つですが、価格が高騰していると注目されています。
資材の価格変動は建設工事における原価管理に影響を与えるため、価格推移を知ることや今後の価格を予測することが大切です。
この記事では、生コンクリートの価格推移を詳しく解説します。生コンクリートの価格が高騰すると、建設業界にどのような影響を与えるのかも紹介します。
資材の価格変動リスクに備えるためにも、ぜひ参考にしてみてください。

生コンクリートの価格推移
一般財団法人 建設物価調査会が公表している「建設資材物価指数グラフ」をもとに、生コンクリートの価格推移を見てみましょう。
建設資材物価指数とは、建設工事で使用する資材の価格動向を表したものです。2015年1月から2025年5月の全国における生コンクリートの建設資材物価指数は、以下の通りです。

引用:一般財団法人 建設物価調査会|建設物価 建設資材物価指数 生コンクリート(全国)2025年5月分指数(2025年6月2日更新)
「建設総合指数」「建築部門指数」「建築補修指数」「土木部門指数」のすべての項目が上昇傾向にあることから、生コンクリートの価格が上昇していることがわかります。
2025年5月10日現在、一般財団法人 建設物価調査会が公表している「全国の価格推移/市況動向」によると、建設物価6月号の関東(東京)におけるレディーミクストコンクリート 18-18-20(25)の価格は23,800円/m³です。
前月と比べて3,000円上昇し、2003年1月以降の最高値を記録しました。関東(東京)以外の主要都市でも、建設物価6月号のレディーミクストコンクリートの価格は最高値を記録しています。
全国の価格推移/市況動向の最新情報は、一般財団法人 建設物価調査会の公式ホームページで随時更新されています。生コンクリートの最新の価格推移を知りたい方は、あわせてチェックしてみてください。
参照:一般財団法人 建設物価調査会|最新の価格動向・市況【特集】資材価格の動向を知る「全国の価格推移/市況動向」
生コンクリートの価格推移に影響を与える要因とは
生コンクリートの価格推移に影響を与える主な要因は、以下の通りです。
原材料や燃料の価格
原材料や燃料の価格変動は、生コンクリートの価格に影響を与えます。
生コンクリートの主原料には「セメント」「骨材(細骨材・粗骨材)」「混和剤」などがあります。「セメント」「骨材(細骨材・粗骨材)」「混和剤」のいずれかの価格が高騰すれば、生コンクリートの価格も高騰するのが一般的です。
特に、生コンクリートの主原料の大部分を占める骨材(細骨材・粗骨材)の価格が高騰すれば、生コンクリートの価格に与える影響も大きくなるでしょう。
また、生コンクリートの主原料であるセメントを製造する際、多くの電力を消費します。電気料金が値上がりすれば、セメントの製造時にかかる燃料費が高騰するため、生コンクリート本体の価格も高騰しやすくなります。
輸送コスト
生コンクリートを建設現場へ届ける際、生コン車(ミキサー車)で運搬します。生コン車の輸送コストが高騰すれば、生コンクリートの価格にも影響を与えます。
さらに、2024年4月1日以降、運送業にも時間外労働の上限規制が適用されました。
運送業の課題の1つが人材不足ですが、生コンクリートには運搬時間が決まっています。規定時間内に建設現場に届ける必要があるため、輸送コストは上昇しやすくなります。
需要と供給の変化
生コンクリートの需要と供給の変化があると、価格が変動する傾向があります。
一般財団法人 建設物価調査会は、近年の生コン出荷量と工場数の推移を公表しています。下表の通り、2000年から2023年にかけて生コン工場数は減少傾向にあるとわかるでしょう。

引用:一般財団法人 建設物価調査会|建設物価調査リポート 2024年12月11日掲載「Web建設物価掲載データから見る生コン市場の動き」1.近年の生コン出荷量と工場数の推移
生コン出荷量も同様に、2018年以降は減少傾向にあります。しかし、大規模な建設工事が集中する場合は、一度に多くの生コンクリートが必要です。
建設現場へ生コンクリートを届けるためには、多くの運搬車両を確保する必要があり、生コンクリートの価格が高騰しやすくなります。
参照:一般財団法人 建設物価調査会|建設物価調査リポート 2024年12月11日掲載「Web建設物価掲載データから見る生コン市場の動き」
生コンクリート製造業者間の価格競争の有無
生コンクリート製造業者間の価格競争の有無によって、生コンクリートの価格が変動します。
生コンクリートの発注先は、協同組合または非協同組合のどちらかの事業者です。非協同組合の事業者は、受注も販売も自社で実施することもあります。一方で、協同組合に加入している事業者の場合は、価格を決めることはできません。
しかし、協同組合に加入している事業者が脱退したり、非協同組合の事業者が協同組合に加入したりすると、価格競争が生まれ価格の下落や高騰が起こります。
公益社団法人 土木学会|第 61 回土木計画学研究発表会・講演集「国内の生コンクリートの供給体制と価格変動に関する研究」には、生コンクリートの価格形成について記述があります。生コンクリート製造業者間の価格競争については、以下リンクから確認してみてください。
参照:公益社団法人 土木学会|第 61 回土木計画学研究発表会・講演集「国内の生コンクリートの供給体制と価格変動に関する研究」

生コンクリートの価格高騰が建設業界へ与える影響
生コンクリートの価格高騰が建設業界へ与える影響は、以下の通りです。
建設工事費の見直し
生コンクリートの価格は建設工事費に直接影響するため、価格が高騰した場合は工事費全体の見直しが必要となることもあります。
建設工事における工事原価を算出することは、原価管理のために重要です。ただ、工事原価算出時と生コンクリートを発注するタイミングは、同じではありません。
生コンクリートを発注する際、見積もり時の価格よりも高騰していることもあります。生コンクリートの価格が高騰すれば予算超過となるため、建設工事費の見直しが必要となります。
建設工事の遅延や中断
生コンクリートの価格が高騰すると、建設工事の遅延や中断が避けられないこともあります。
コンクリート工事で多くの生コンクリートを必要とする場合、生コン工場の生産能力を超えてしまい、建設現場への供給が困難になります。また、生コン工場の生産能力が十分でも、生コン車を確保できず運搬できないこともあるでしょう。
生コンクリートを調達できなければコンクリート工事を実施できないため、決められた工程で作業を進められなくなります。場合によっては、建設工事が中断する可能性もあります。
【2025年度の見通し】生コンクリートの価格
東京地区生コンクリート協同組合「2025年度4月1日以降の生コン定価見直しについて(お願い)」によると、2025年4月1日以降の生コンクリートの出荷分から、3,000円/m³の価格改定が実施されました。
しかし、一般財団法人 建設物価調査会「主要資材価格動向(2025年5月10日現在 東京)」によると、レディーミクストコンクリートの現行価格を維持する見込みと公表されています。
2025年5月10日時点で、2025年度における生コンクリートの価格は、横ばいと予想されています。
参照:
東京地区生コンクリート協同組合「2025年度4月1日以降の生コン定価見直しについて(お願い)」
一般財団法人 建設物価調査会|主要資材価格動向(2025年5月10日現在 東京)レディーミクストコンクリート
まとめ
この記事では、生コンクリートの価格推移と、その変動要因について解説しました。「原材料や燃料の価格」「輸送コスト」「需要と供給の変化」「生コンクリート製造業者間の価格競争の有無」は、生コンクリートの価格に影響を与えます。
2025年5月時点で、生コンクリートの価格は上昇傾向にあります。しかし、一般財団法人 建設物価調査会が公表している通り、2025年度における生コンクリートの価格は横ばいとなる見込みです。
ただし、生コンクリートの価格変動に影響を与える要因は複数あるため、今後は価格が変動する可能性もあります。引き続き資材価格の動向に関する情報をお届けするので、ぜひ情報収集にお役立てください。
