コラム
建築資材

セメントの価格推移|価格高騰に与える要因や建設業界への影響、今後の見通しを解説

セメントは、生コンクリートの主な原材料です。コンクリート工事の材料費は、セメントの資材価格が大きく影響します。

建設業界では資材価格の高騰に関する話題が注目されていますが、2025年度のセメント価格も正確に知っておく必要があります。

この記事では、セメントの価格推移を詳しく解説。価格高騰に与える要因や建設業界への影響、2025年度のセメント価格の見通しも紹介します。概算工事費や工事原価を正確に算出するためにも、ぜひ参考にしてみてください。

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セメントの価格推移

一般財団法人 建設物価調査会では「建設資材物価指数グラフ」を公表しています。建設資材物価指数とは、建設工事で使用する資材の価格動向を表したものです。

2015年からの全国におけるセメントの建設資材物価指数は、以下の通りです。

出典:一般財団法人 建設物価調査会|建設物価 建設資材物価指数 セメント(全国)2025年5月分指数(2025年6月2日更新)

「建設総合指数」「建築部門指数」「建築補修指数」「土木部門指数」の全項目で、2018年9月から2019年5月にかけて建設資材物価指数が上昇していることから、セメントの価格が上昇したことがわかります。

さらに、2022年5月から2023年9月にかけて、セメントの価格が急激に上昇しました。

2025年5月10日現在、一般財団法人 建設物価調査会が公表している「全国の価格推移/市況動向」によると、建設物価6月号の関東(東京)における普通セメントの価格は18,000円/tです。前月から2,000円上昇しており、2003年の1月以降の最高値を記録しています。

関東(東京)以外の主要都市でも、建設物価6月号のセメントの価格は最高値を記録しています。

全国の価格推移/市況動向の最新情報は、一般財団法人 建設物価調査会の公式ホームページで随時更新されています。セメントの最新の価格推移を知りたい方は、あわせてチェックしてみてください。

参照:一般財団法人 建設物価調査会|最新の価格動向・市況【特集】資材価格の動向を知る「全国の価格推移/市況動向」

セメントの価格推移に影響を与える要因とは

倉庫にセメント袋が積み重なっている画像

セメントの価格推移に影響を与える主な要因は、以下の3つです。

原材料や燃料の価格変動

原材料や燃料費の価格変動は、セメントの価格に影響を与えます。1tのセメントを製造する際に必要な原材料は、以下の通りです。

【1tのセメントを製造する際に必要な原材料】

  • 石灰石:1,100kg
  • 粘土:200kg
  • その他原料:100〜200kg

セメントの製造工程で必要な原材料の価格が高騰すれば、セメント本体の価格も高くなるといえます。

また、セメントの製造工程は以下の図の通りです。

出典:一般社団法人セメント協会|技術と用途「セメントとは」セメントができるまで(製造工程)

セメントの製造工程では電力を使用します。電気料金が高くなれば、セメント本体の価格も高くなると考えられます。

輸送コスト

生コンクリート工場などにセメントを届けるとき、輸送コストがかかります。

国土交通省は「セメント業界の現状について 2024年5月16日 内航海運と荷主との連携強化に関する懇談会」を実施し、セメントの物流体系について以下のように掲載しています。

出典:国土交通省|セメント業界の現状について2024年5月16日 内航海運と荷主との連携強化に関する懇談会 1.セメントの物流体系

セメントの輸送に使用されているのは、タンカーやトラックなどです。タンカーやトラックの輸送コストが高くなれば、セメントの価格も高くなります。

また、運送業では2024年4月1日から時間外労働の上限規制が適用されました。働き方改革が推進されている一方で、人材不足の課題を抱えているため輸送費が上昇しやすくなります。

国内需要の変化

セメントの国内需要が変化により、セメント本体の価格が変動することもあります。国土交通省を中心に、建設業ではカーボンニュートラル実現に向けて、建設材料の脱炭素化の取り組みが進められています。

たとえば、低炭素型コンクリートの活用です。低炭素型コンクリートとは、従来コンクリートのポルトランドセメントの一部を、高炉スラグ微粉末やフライアッシュなどの混和材に置き換えたコンクリートです。

国土交通省の直轄工事では、ポルトランドセメントの置換率を55%以上としたモデル工事を実施するなど、カーボンニュートラルの実現を目指しています。

しかし、セメントの国内需要の減少にもつながるため、価格が改定されることもあるでしょう。

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セメントの価格動向に対するセメントメーカー3社の対応

セメントの価格動向に対するセメントメーカー3社の対応は、以下の通りです。

太平洋セメント株式会社

太平洋セメント株式会社(本社:東京都文京区)は、直近5年の間にセメントの価格改定を3度実施しています。

2022年1月1日出荷分からは、現行価格より2,000円/tの値上げを実施実施しました。2022年10月1日出荷分からは「石炭価格サーチャージ方式」「定額価格改定方式」いずれかを選択することになります。

さらに、2025年4月1日出荷分からは、現行価格より2,000円/t以上の値上げを実施しました。

2022年10月1日荷渡し分からは、現行価格より3,000円/tの値上げを実施。また、2025年5月13日のニュースリリースでは、低炭素型混合セメント「高炉セメントC種」の製造と販売の開始を公表。

低炭素型混合セメント「高炉セメントC種」を使用すると、ポルトランドセメントでCO2削減率が約65%に。カーボンニュートラル実現に向けた取り組みを進めているといえます。

参照:太平洋セメント株式会社公式サイト

UBE三菱セメント株式会社

UBE三菱セメント株式会社(本社:東京都千代田区)は、直近5年の間にセメントの価格改定を2度実施しています。

2022年10月1日荷渡し分からは、現行価格より3,000円/tの値上げを実施。2025年4月1日荷渡し分からは、現行価格より2,000円/tの値上げを実施しました。

ただし、2025年4月1日荷渡し分からの値上げ以降、セメントの価格改定は行われていません。

また、2025年2月28日のプレスリリースでは、セメント製造にアンモニアを熱エネルギー源として使用する実証実験の開始を公表しました。

セメントキルンで石炭の熱量比30%をアンモニアで代替するなど、カーボンニュートラルを実現するための取り組みを進めています。

参照:UBE三菱セメント株式会社公式サイト

住友大阪セメント株式会社(本社:東京都港区)は、直近5年の間にセメントの価格改定を3度実施しています。

2022年2月1日からは、現行価格より2,400円/tの値上げを実施しました。立て続けに、2022年10月1日からは3,000円/tの値上げを実施しました。さらに、2025年4月1日からは、現行価格より2,200円/t以上の値上げを決定しています。ただし、2025年4月1日の値上げ以降、セメントの価格改定は行われていません。

また、2025年3月19日のニュースリリースでは、セメント配船計画の策定にAIソリューションを導入すると公表。AIを導入したセメント配船計画の策定により、CO2排出量の削減が期待されています。なお、AIを活用した配船計画の策定は業界初となります。

参照:住友大阪セメント株式会社公式サイト

コンクリート全体への波及と建設業界への影響

セメントの価格変動によるコンクリート全体への波及と建設業界への影響は、以下の通りです。

生コンクリートの価格推移

生コンクリートは「セメント」「水」「細骨材」「粗骨材」「混和材料」で構成されているため、生コンクリートの価格は原材料の価格に影響を受けます。

セメントの価格が高騰すれば、生コンクリートの価格も高騰すると予想できます。

建設工事費への影響

コンクリートの原材料となっているセメントの価格は、建設工事費に影響を与えます。

建設工事でコンクリートを使用する量が多いほど、コンクリート工の材料費が高くなります。概算工事費を算出する際のセメントの価格よりも、工事が発注後の工事原価におけるセメントの価格が高騰すると、予定していた工程で工事が進められない恐れも。

スムーズに工事を進行させるためにも、今後のセメントの価格がどうなるか予測を立てることが重要です。

【2025年度の見通し】セメントの価格はどうなる?

一般社団法人 セメント協会は、2025年2月27日に2025年度のセメント需要の見通しを公表。同協会の「2025年度セメント需要見通し」によると、2025年度におけるセメントの国内需要は、32,000千t(前年比97.7%)の見込みです。

官需においては、労務費や資材価格の上昇が要因となり、金額あたりのセメント使用量は減少すると想定されています。

セメントの需要減少が止まらない状況を受け、昨年上期からメーカーが交渉を続けた結果、値上げが浸透しました。ただし、メーカーはセメントの価格維持に努める考えを持っており、今後も横ばいとなる見込みです。

参照:一般社団法人 セメント協会|セメントの需給●2025年度セメント需要見通し●

まとめ

この記事では、セメントの価格推移を解説しました。「原材料や燃料の価格」「輸送コスト」「国内需要の変化」などの要因により、セメントの価格は変動します。

コンクリート工事では多くのセメントが消費されるため、コンクリート全体や建設業界への影響も大きいといえるでしょう。セメントの需要減少が止まらず、昨年上期からメーカーが交渉を続け値上げが浸透していますが、メーカーはセメントの価格維持に努める考えを持っています。

2025年度のセメントの価格は、横ばいとなる見込みです。しかし、今後の社会情勢などでセメントの価格変動が起こる可能性もあるため、将来のセメントの価格を正確に捉えるためにも、資材価格の動向を知ることが重要です。

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